高齢者虐待が減った??
【虐待ケースの減少】
厚生労働省の「2020年度高齢者虐待対応状況等調査」の全国集計によると、高齢者施設や居宅サービス事業所による虐待と判断されたケースが595件でした。2019年の同調査が644件であったため49件少なくなっており、前年度の数字を下回ったのは、調査を開始した2006年度以降初めてのことです。
介護従事者による虐待が減ったということは、高齢者介護の仕事に携わっている者としては、喜ばしいことですし、利用者や家族からしても安心できる材料になるでしょう。
【高齢者施設での虐待は本当に減っているのか】
しかしこの数字を見て、本当に介護従事者による虐待が減ったということにはならないと私は考えています。なぜそのような疑問があるかというと、新型コロナウィルスの感染拡大が影響しているためです。
少し前の調査報告になりますが、新型コロナウィルスの感染拡大以前である2015年の厚生労働省による調査報告では、介護従事者等による高齢者虐待についての相談・通報件数は1640件でした。相談・通報者の内訳のうち最も多いのが職員からによるもので21.9%、次いで多いのが家族・親族からで20%という統計が出ています。
それに対して2020年度の相談・通報者は2390件で、相談・通報者の内訳は最も多いのは職員からで26.7%、家族・親族が14.5%となっているのです。
上記の数字の比較から、職員からの相談・通報の割合が増加していることに対して、家族・親族からの割合が大幅に減少していることが分かります。
新型コロナウィルスの感染拡大が始まって以来、大きく変わったことがあります。それは家族が施設の中に入ることが出来ない、利用者に面会をすることが出来ないという状況です。
家族が施設の中に入ることが出来ない、親などに直接会うことが出来ないため、施設での職員の対応に対して不信や不満をもつ家族は、ほとんどいなくなってしまったのです。
また、コロナ禍に高齢者施設に自分の親などを預けている家族の心境としては、「ただでさえ大変な仕事にも関わらず、更にコロナの感染のリスクを負いながら働いている職員は大変だ。そのような状況の中で、自宅で見ることのできない自分の親を預かってもらって、施設の職員には大変感謝している」という心理も状態にもなってきているのです。
上記のことにより、高齢者施設での家族・親族からの相談・通報をする人が少なくなり、虐待件数が前年度よりも減ったのではないかと考えられます。
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